第41話 狐とやんぼし
ある日ンこつ、やんぼしどんの萩原ンともば行きよらすとこれ、狐やつが草はりゃ、ひんねしとったてたい。そっば見たやんぼしどんな、ふざけてかり太かほら貝ば、狐ン耳ンとこっで「ウワーン」て吹きならきゃて見とらすと、トロトロよか気持で寝とった狐やつぁ飛びあがるごつ、たんがって「キャンキャン」にゃあて、麓ン山ン中さん逃げち行ったてたい。やんぼしどんな、脳ンねじるうごつ笑うて見とらしたてたい。狐ン耳ンコマクの打ちゃぶれてかり、いっちょん聞こえんごつなったげな。そっで狐やつぁ、そうにゃくやっしゃしてかり、どぎゃんなっとして、やんぼしどんばやっつけちやろて、なんのかんのて思案したばってん、あからんもんだけん、しょてかり知っとった、出町ン彦一ィ間きぎゃいた。
「やしいこったい。こぎゃんしてみんかー。」
て、教えたげな。こんやんぼしどんな、八代にきてから、よう泊まる百姓家ン宮地ィあったげな。狐やつぁ彦一ィ教えられたごつ、ある日、そこん家ンもんの畑さん行かすとば、つけち行たてかり、わざとそん百姓ン者の目につくこつして、藪ン中かりチョコチョコ姿ばじゃて、しばン葉や草ン葉ば体にひっつけち、やんぼしどんにばけちみせたげな。そしてかり、そんまま宮地ン家さん行くまねばして山さんもどっていったげな。百姓ンもんな仕事ンすんでかり家さんもどって見つとやんぼしどんの、縁がわゃ腰かけて煙草どんのみよらすもんだけん
「おどりゃ、こん狐げだ!まあだ、やんぼしどんに化けとる。」
て、言うてかりとなりきんぺんのもんば、よびあつめちきとって、太かこん棒や、竹ン棒で、やんぼしどんばポカポカめった打ちィさしたげな。やんぼしどんな、ほんなこてふてめおうて逃げじゃあて、そっかさき、八代にゃ姿ば見せらっさんごっならしたげな。