高圧ガスの消費
高圧ガス保安法での消費は、「特定高圧ガス消費」と「その他の消費に」に分けられます。特定高圧ガス消費は、消費のために貯蔵しているガス種と貯蔵量などにより届け出が必要となりますので注意して下さい。また、消費する過程で高圧ガスの製造になる場合があります。下記の法の解釈の基本通達で説明されていますので特に注意して下さい。
高圧ガス保安法における消費の定義(基本通達:第24条の2関係(消費)より)
高圧ガスの「消費」とは、高圧ガスを燃焼、反応、溶解等により廃棄以外の一定の目的のために減圧弁等単体機器である減圧設備のみにより瞬時に高圧ガスから高圧ガスでない状態へ移行させること及びこれに引き続き生じた高圧ガスではないガスを使用することをいう。
なお、消費の前段階において消費を効果的に行うため、加圧蒸発器出口圧力が1MPa以上となる気化器等を社会通念上の消費設備に組み入れて使用する場合が多いが、これ等のように消費の前段階において高圧ガスを処理する部分は、高圧ガスの「製造」としての規制を受けることとなるので、この点、特に留意されたい。
特定高圧ガス消費の届出(法第24条の2、政令第7条第2項)
下表の貯蔵能力以上の設備により消費するときまたは導管により供給を受けて消費する者は、事業所ごとに消費開始の20日前までに、知事に「特定高圧ガス消費届」が必要です。
下表の特定高圧ガスを規定数量以上貯蔵して消費する場合は、「特定高圧ガス消費者」となります。
なお、特殊高圧ガスを消費する場合は、貯蔵数量に関係なく、全てが「特定高圧ガス消費者」となります。
特定高圧ガス | 規程数量 |
圧縮水素圧縮天然ガス | 300 m3以上 |
液化酸素 液化石油ガス 液化アンモニア |
3000 kg以上 |
液化塩素 | 1000 kg以上 |
特殊高圧ガス(モノシラン、ホスフィン、アルシン、 ジボラン、セレン化水素、モノゲルマン、 ジシラン) |
貯蔵数量に関係なくすべて |
※液化石油ガス法による業務用の場合は、10,000kg以上
その他の消費の基準
高圧ガス保安法では、可燃性ガス、毒性ガス、酸素、空気の消費基準が次のとおり規定されており、不活性ガスの基準はありませんが、高圧のガスには変わりありませんので次の基準に準じて取り扱いをお願いします。
項 目 |
基準項目 |
省 令 |
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一般則第60条 | 液石則第58条 | |||
■すべての高圧ガス | ||||
バルブの開閉 | 充てん容器等のバルブは、静かに開閉すること。 | 1 | 1 | |
充てん容器等の転落・転倒防止 | 充てん容器等は、転落、転倒等による衝撃又はバルブの損傷を受けないよう粗暴な取扱いをしないこと。 | 2 | 2 | |
充てん容器等の加熱方法 | 充てん容器等、バルブ又は配管を加熱するときは、次に掲げるいずれかの方法により行うこと。ただし、安全弁及び圧力又は温度を調節する自動制御装置を設けた加熱器内の配管については、この限りでない。
イ 熱湿布を使用すること。 |
3 | 3 | |
腐食防止措置 | 充てん容器等には、湿気、水滴等による腐食を防止する措置を講ずること。 | 4 | 4 | |
バルブ操作の適切な措置 | 消費設備に設けたバルブ又はコックには、作業員が当該バルブ又はコックを適切に操作することができるような措置を講ずること。※1 | 5 | 10(液石法第53条第1項第14号) | |
バルブに過大な力を加えない措置 | 消費設備に設けたバルブを操作する場合にバルブの材質、構造及び状態を勘案して過大な力を加えないよう必要な措置を講ずること。※2 | 6 | 10(液石法第53条第2項第4号) | |
消費後の容器 | 消費した後は、バルブを閉じ、容器の転倒及びバルブの損傷を防止する措置を講ずること。 | 16 | 6 | |
修理等の方法 | 消費設備の修理又は清掃(以下この号において「修理等」という。)及びその後の消費は、次に掲げる基準によることにより保安上支障のない状態で行うこと。※3
イ 修理等をするときは、あらかじめ、修理等の作業計画及び当該作業の責任者を定め、修理等は当該作業計画に従い、かつ、当該責任者の監視の下に行うこと又は異常があつたときに直ちにその旨を当該責任者に通報するための措置を講じて行うこと。 |
17 | 10(液石法第53条第2項第3号) | |
日常点検と異常時の補修等の義務 | 高圧ガスの消費は、消費設備の使用開始時及び使用終了時に消費施設の異常の有無を点検するほか、1日に1回以上消費設備の作動状況について点検し、異常のあるときは、当該設備の補修その他の危険を防止する措置を講じてすること。※4 | 18 | 10(液石法第53条第2項第2号) | |
一般複合容器の使用制限 | 一般複合容器は、水中で使用しないこと。 | 19 |
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■酸素ガス | ||||
酸素消費時の措置 | 酸素又は三フッ化窒素の消費は、バルブ及び消費に使用する器具の石油類、油脂類その他可燃性の物を除去した後にすること。 | 15 |
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■酸素と可燃性ガス | ||||
火気の使用禁止等 | 可燃性ガス、酸素又は三フッ化窒素の消費に使用する設備(家庭用設備を除く。)から5メートル以内においては、喫煙及び火気(当該設備内のものを除く。)の使用を禁じ、かつ、引火性又は発火性の物を置かないこと。(※5)ただし、火気等を使用する場所との間に当該設備から漏えいしたガスに係る流動防止措置(※6)又は可燃性ガス、酸素若しくは三フッ化窒素が漏えいしたときに連動装置により直ちに使用中の火気を消すための措置を講じた場合は、この限りでない。 | 10 | 7(液石法第53条第2項第1号) | |
消火器の設置 | 可燃性ガス、酸素及び三フッ化窒素の消費施設(在宅酸素療法用のもの及び家庭用設備に係るものを除く。)には、その規模に応じて、適切な消火設備を適切な箇所に設けること。※7 | 12 | 9 | |
■可燃性ガス(貯槽) | ||||
静電気の除去 | 可燃性ガスの貯槽には、当該貯槽に生ずる静電気を除去する措置を講ずること。(液石法:消費設備には、当該設備に生ずる静電気を除去する措置を講ずること。)※8 | 11 | 10(液石法第53条第1項第12号) | |
■可燃性ガス・毒性ガス | ||||
通風の良い場所と40℃以下の保持 | 可燃性ガス又は毒性ガスの消費は、通風の良い場所でし、かつ、その容器を温度40℃以下に保つこと。※9 | 7 | 5 | |
■液化石油ガス | ||||
漏えい検知器と警報地の設置 | 消費施設には、当該施設から漏えいする液化石油ガスが滞留するおそれのある場所に、液化石油ガスの漏えいを検知し、かつ、警報するための設備を設けること。※10 |
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10(液石法第53条第1項第5号) | |
■溶接溶断ガス | ||||
逆火、漏えい等防止措置 | 溶接又は熱切断用のアセチレンガスの消費は、当該ガスの逆火、漏えい、爆発等による災害を防止するための措置を講じて行うこと。※11 | 13 | 8 | |
漏えい、爆発等災害防止措置 | 溶接又は熱切断用の天然ガスの消費は、当該ガスの漏えい、爆発等による災害を防止するための措置を講じて行うこと。※11 | 14 |
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※1 詳細については、「一般則例示基準 33.バルブ等の操作に係る適切な措置」を参照して下さい。
※2 詳細については、「一般則例示基準 51.バルブに過大な力を加えない措置」を参照して下さい。
※3 詳細については、「一般則例示基準 50.設備の修理又は清掃」を参照して下さい。
※4 詳細については、「一般則例示基準 49.設備の点検・異常確認時の措置」を参照して下さい。
※5 「消費に使用する設備(家庭用設備を除く。)から5メートル以内においては、喫煙及び火気(当該設備内のものを除く。)の使用を禁じ」とあるが、在宅酸素療法において酸素を小規模に消費する設備の場合は、直近において喫煙し、あるいは火気を使用する場合を除いて、その危険性は非常に低い。したがって、在宅酸素療法において酸素を内容積5リットル以下の容器を用いて消費する設備及び酸素を内容積5リットル超の容器を用いて消費する設備のうち減圧設備より下流の設備については、本号の規定にかかわらず、直近での喫煙及び火気の使用のみを禁止するものとして運用するものとする。
なお、その場合、漏洩した酸素が滞留しないようにすること。(基本通達)
※6 「流動防止措置」については、「一般則例示基準 2.流動防止措置」を参照して下さい。
※7 詳細については、「一般則例示基準 31.防消火設備」を参照して下さい。
※8 詳細については、「一般則例示基準 30.静電気の除去」を参照して下さい。
※9 製造施設の位置、構造及び設備並びに製造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示第11条の3の規定によるシリンダーキャビネットに収納して消費する場合、本号の規定を満たしているものとする。シリンダーキャビネットに収納して消費する場合は、この規程を満たしているものとする。(シリンダーキャビネットの基準:製造細目告示第11条の3)
※10 許可・届けの対象とならない「その他の消費」に設置する漏えい警報器については、「液石則例示基準 24.ガス漏えい検知警報設備」を参照して下さい。
※11 詳細については、「一般則例示基準 79.溶接又は熱切断用のアセチレンガス又は天然ガスの消費」を参照して下さい。